坪井直氏2015年インタビュー(ToFuture2015)

7月13日木曜日
私は今年も被団協理事長の坪井さんにお話を伺うため平和会館へやってきました。原爆投下から70年を迎えた2015年夏、齢90歳を迎えた坪井さんは今年も笑顔で私を迎えてくれました。大変お忙しい中、お時間を取ってくださった坪井さん、そして被団協のみなさんにあらためて感謝を申し上げます。
INTERVIEWED : GUY(大小田伸二)

GUY:今年もよろしくお願いします。2015年7月15日に自公民によって国会で強行採決されようとしている戦争法案(安全保障法制の関連法案)  について坪井さんのご意見を聞かせてください。そしてその法案に反対の意思を示した多くの国民による全国各地のデモについてお聞かせください。
※1:集団的自衛権の行使容認を含む新たな安全保障関連法案(7月15日に強行採決)
 
坪井直さん(以下敬称略):戦争法案なんていらないです。本当に話にならんと思っています。私は人一倍そういう想いが強いです。何を急いで何をやろうとしているんでしょうか?
もし本当に国民に必要な事柄だと思うのならば国民投票という形で九条について国民に問えばいいんです。憲法の拡大解釈による集団自衛権や、今回のような戦争法案の強行採決の流れのような順序の違うやり方は絶対承服できません。
時の政府だけでこんな大事なことを決めていかんと思います。今が危険になるだけでなく、後の政府にとって更なる拡大解釈をあたえてしまう恐れすらあると思っています。今の若者たちに対しても、もっと意見を言ってほしいと思います。徴兵制がないから大丈夫だと思っていると思いますが、「戦争だからしょうがないしょうがない」と、どんどん変わってきた時代を私たちは経験しておるんですからね。若者は自身の問題だということを自覚して意見を発信してほしいと思います。
今回のデモは大人世代を中心に発信してますし、それはとても大きな力だと思います。しかし若者の意見があまりみえないから、もっともっと関心を持ってほしいと思います。
そして国を護るためには必要だと本当に思っている議員さんや大臣、そして自公民の考えに賛同する人達に言いたいのは「先ずあなた達から矢面に立ってください」と思いますね。
必要だ必要だと説きながら実際に戦闘に参加するのは若者ですからね。
そして戦争が起こってしまえば核兵器の使用という可能性が出てくるわけです。抑止力だという意見もあるようですが可能性は絶対に否定できないでしょう?
昔と違いエノラゲイ(B29)から投下する原爆では今はないんです。
破壊力はもちろん70年前とは比べ物になりませんし、核弾頭を備えたミサイルでいつどこからでも発射できる。無人機に搭載すればより確実に目標を攻撃できるとても恐ろしい兵器なんです。そして一度投下してしまえば民族どころではなく人類の終わりです。そして被爆した人たちは私たち被爆者と同じように死ぬまで放射能に苦しめられるんです! テロリストに万が一、核物質が奪われてしまえばいつどこでとんでもない被害が起きてしまいますよね! 貿易センターへの攻撃にテロリストの核兵器が使われていたらと考えると恐ろしいですよね。
そういう危険な兵器だということをみんながもっと自覚しないといかんと思います。

GUY:戦争法を通してしまった後のことまで考えていかないといけないということですね。

坪井:そうです。戦争法はもちろん反対です! しかし、ただ闇雲に反対しているのでなく、それの次にどうなる可能性があるのかということを具体的に考えて反対を訴えているんです。

GUY:今年5月に行われたNPT(核不拡散条約)再検討会議が不調に終わったと記事で見ましたが。

坪井:不調の一つの原因は不安定な中東情勢にあると思います。そういうテロに対して核の威嚇が必要な部分があると判断したのでしょう。まだ抑止力が必要だと考えている国があるのだと思います。中東の問題が解決の方向に向かえば、不拡散~削減へと進む可能性は大いにあります。
そもそも抑止力というのは国と国が原爆を持つことが国力だと思っていることから生まれたものでしょう?
だから私は真の意味で国境など無くなればいいと考えています。音楽や芸術、スポーツには国境はないでしょう? ただトップを取った選手やアーティストには敬意が払われるだけです。
国同士の競争という概念はそれに付随しているだけです。国境があるから領土の取り合いになるし、戦争の原因にもなる。いつまでもそれを繰り返していたらそれこそ人類の破滅ですよ。
これからは国益を考えるのではなく人類にとっての益を考えていかねばならないと思います。もちろん、これは理想ですが現実的に考えたほうが変なことになっておりますよね?
原爆の使用は人道的に違反しておると分かりながら現実には抑止力と核の傘にしがみついている国々(日本も含む)もいるということ自体おかしなことでしょう?
理想を一歩でも二歩でも進めれればそれが人類の進歩だと思っています。
国境がなくなる傾向で、EUという経済圏での交流もそのひとつだと思います。ギリシャという問題もありますが、EUROという共通通貨がなくなるとは思えないですよね。

今回の集団自衛権の拡大解釈の問題ですが、多くの憲法学者が違憲だと判断しながら性急に推し進めようとしている自公民に言いたいです。
後の歴史から見れば、この時の判断が大失敗だったと言われかねないということをやってるんだということを議員さんたちに考えてほしいですね。

GUY:国民の多くは戦争はいかんと思っているし、憲法違反だとも気づいている。今回のような大きなデモも各地で起こっている。なのに永田町の小さなところでは逆のことが行われているなんて本当に不思議だと思います。

坪井:自民党は集団自衛権や戦争法を支持されて議席を取れたのではない、ということを自覚しなければいかんですね。国民に対して詳しい説明を全然しないうちに自分達に都合のいい法案だけ通そうとしてますよね。何を血迷っているのか!! と強く思います!

まぁ、こういうところまで突っ込んでいえるのはこの冊子だけですよ。でもこの冊子を読んで感じてくれるひとも大勢いますからね。

日本政府もアメリカ政府に追従するのは考えねばいかんと思いますよ。日本がアメリカを頼りにしているほどアメリカは日本のことを考えているとは思えませんよね。こういう関係がいつまでも続くとは思えません。日本政府も新しい関係を築きあげなければいかんと思います。アジアをはじめとする国どおしの交流もそのひとつです。そうやって人類が最終的に到達するのが「国境のないひとつの国」ですね。一つになることで様々な問題はあると思いますが、人間には叡智もあれば、理性もある。そうやって人間は進歩していかなければなりません。

GUY:原発の再稼働の問題についてどう思われますか。

坪井:放射性物質の中でも百年、千年も半減期が、かかるものがたくさんあります。そういう放射線を中和し、人類が核エネルギーを克服し、完全にコントロールできるなら使えばいいと思います。けれど、実際は無理ですよね。経済から考えても廃炉を含め莫大な経費がかかります。結果、原発は廃炉しなければなりません!!
福島第一原発をはじめチェルノブイリやスリーマイルをはじめ多くの原発による過酷事故の報道で全てが我々に明らかにされているとはとても思えないでしょう。原発の使用が長引けば長引くほど後の世代に後始末を押し付けることになるんです。そういう危険で無駄なものは絶対使用してはならんのです。

GUY:ありがとうございます。
それでは広島市が被爆70年を迎えた今年、そしてこれからの未来について坪井さんが考えておられる意見をお聞かせください。

坪井:71年には棺桶に入っているかもね(笑)

GUY:いえいえ来年もお元気で頑張ってもらわねば!

坪井:70年を迎えた新たなる目標ですね。
その前に言っておきたいのは被爆してすぐに死ぬると言われ、これまでも何度も死にかけた私が今でも生きとられるのは周りのみなさんのおかげですね。本当に感謝しなければいかんと思っています。

そのうえで、私のあらたなる目標は「真実を伝えなければいかん」と思います。今までも伝えてきましたが、被団協の理事長をはじめ様々な役職についておりました故、個人の考えより被爆者全体の意見を第一に発信してきました。私も歳ですからいつまで理事長がつづけれるかわかりません。ですから、これからは個人として坪井直という一個の人間としても、みなさんに真実を伝えたいと思っています!!

GUY:来年の坪井さんにも期待しております。
ところで今年も安倍首相と会われる機会があると思います。
そのときに伝えたいことはありますか?

坪井:被団協として、被爆者の代表してして安倍首相に聞きたいのは、麻生首相と交わした確認書についてのその後の動きについてですね。
原発に代わるエネルギー、そして戦争法はいりませんというのも伝えたいです。

GUY:最後にこの冊子を読んでいるみなさんにメッセージをよろしくお願いいたします。

坪井:何があってもとにかくあきらめるなと。
あなたたちが思っていることは必ず理解者がいるはずです。
だから決してあきらめないでください。
「ネバーギブアップ!!」

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