THE REBEL RIOT とミャンマーパンクスの今 – 高崎英樹BRONZE FIST RECORDS

東南アジアに位置する「ミャンマー」の情勢はネットなどを通じて情報は知ってはいたものの、詳しく知る機会がないままでした。
今寄稿の著者の高崎氏が運営するレーベルよりミャンマーで活動するPUNK バンド「THE REBEL RIOT」のアルバムリリース決定のインフォメーションを受け取り、かの地での出来事がぐっと身近な問題に感じられ、ミャンマー、そしてそこで活動するパンクス達に興味がわいた私は「PUNK ROCK」を通して現在の日本で一番ミャンマーとその音楽に精通している高崎氏に原稿を依頼しました。( 大小田伸二 a.k.a. GUY)


東南アジアのインドシナ半島西部に位置する共和制国家・ミャンマーにもパンクシーンが存在するとSNSを通じて知り、筆者がタイ経由で訪問したのは2011年春であった。滞在期間にパンクのイベントが行われ、シーンの中心であったチョーチョー率いるTHE REBEL RIOTそしてミャンマーパンクス達と親交を深めた。
2021年2月1日にミャンマーで軍事クーデターが発生した直後、 THE REBEL RIOTは軍事政権を批判する『One Day』を素早く録音し、2月11日にはPVを全世界に公開した。
ミャンマーの仲間のために筆者が出来る事はないか、と考えBRONZE FIST RECORDS内HarimauAsiaレーベルから同年6月に3曲入りアナログ7インチ「One Day」そして12月に彼らが夏に録音した10曲入りアルバムにボーナストラック2曲を加えたCD「One Day」を、2022年秋にはミャンマーパンクスが長年行っている、貧困層に食料を配布するFood Not BombsへのドネーションのためのオムニバスCD「Women At The Front」(アジア地域の女性ボーカルのハードコアバンドが全て新曲で参加)をリリースした。
日本国内のメディア・関係者の皆さんの御厚意で大手新聞や雑誌、地上波テレビ番組、インターネ
ット番組などで取り上げられた。しかしながら依然、ミャンマー情勢は混迷を極めている中で THE REBEL RIOTは危険を顧みず、昨年は三回ライブを行い、さらに現在はニューアルバムを制作中である。ここに掲載するのはTHE REBEL RIOTの、2023年7月現在の最新インタビューである。
(中心人物・チョーチョーのクレジットは先方の希望でKKとしてあります)


-日本の読者に現在のミャンマーの状況を説明して下さい。
KK(ボーカル)「クーデターから2年以上が経ったけど、ミャンマーでは何もかもが引き裂かれ、経済はどん底に落ちて商品価格が急騰しているね。貧困は過去最高で、人々はあらゆる苦難に苦しんでるんだ。革命に関する観点から見れば、この数年間に戦いが増えたせいで、双方がより多くの損失を被ったんだ。でもPDFの側には良いニュースがあるよ。革命のレベルは高いね。たとえ軍が村を焼き払い、女性をレイプし、罪のない人々をたくさん殺しても彼らは戦争に勝ってはいないよ。街の様子に関しては…ヤンゴンやマンダレー、ネピドーのように大きな都市は平常に戻って、イベントやビアホール、ナイトクラブが再開されて、金持ちやビルマ軍高官の子供たちはそこで楽しんでいるね」
※PDFはミャンマー民主派の自衛組織・PeoplesDefence Force(市民防衛隊)の略。
A Yoe Lay(ドラム)「政治状況はすごく複雑です。貧困が拡大していて、どこへ行っても安全と
は感じられません」
Wai Yan(ギター)「現在の状況は経済危機のようで、草の根の人々はとても苦しんでいます。十分な食べ物がない人もいるし、軍隊は日々抑圧されている。そして彼らは公共の場で罪のない人々
を殺しています」
Ye Yint(ベース)「クーデターから2年の間に、不当な税金のせいで燃料の値段も商品の値段も3倍になり、さらに高騰していて人々の生活は影響を受けています。一方で今、麻薬はとても安くなり、どこのストリートでも簡単に購入できるようになっています。麻薬の売人も使用者も、強盗も、ギャンブルも以前よりも増えました。そして軍隊は反対する者を残酷に弾圧し、投獄しています。若者はそれに耐えられません。内戦中、軍は村を焼き払い、略奪し、飛行機で爆撃しています。都市部では食糧難や生活難が深刻化するにつれ、強盗や殺人が日に日に増えています。物が盗まれるだけでなく、精神的に病んだ人たちによる殺人が行われるほど状況は悪くなっています。逮捕され、お金で身代金を要求される人も多くいます。これが僕らが現在、目にしていることです。
ミャンマーの状況はまだ非常に悪いです」

-現在、ミャンマーで活動しているパンクバンドはThe Rebel RiotとThe Slingshotと、あとどのくらいいるの?FacebookでNo U Turn(筆者が2011年の渡航時のイベントにも出演していたバンド)のギグフライヤーを見たけど。
KK「パンクバンドは以前より弱くなってるね。The Rebel RiotとThe Slingshotは続いてるよ。No U Turnに関しては、イベントをやっているのを見たよ。新しいポップパンクのバンドも出てきてる。パンクシーンは2つに分かれているんだ。政治的な所属があるんだけど、No U Turnや他のバンドは政治的ではない。そして僕らの考えでは今、バーで演奏しているバンドは奨励しないね。なぜなら今のビアバーの多くはビルマ軍を支持するグループが経営しているんだ」
Wai Yan「The Rebel Riotは活発だけどTheSlingshotは今はあまり活発ではないかも。No UTurnはどういう立場で、どういう認識を持って活動しているのかはよく分からないです」


-戒厳令下にもかかわらず昨年は3回、ライブやったよね?拘束される危険はなかったの?
KK「危険はあるかも知れない。特に僕らの歌詞は革命的なものが多いから。でも自分たちが信じることをすることに恐れはないよ。こういうイベントは、特に若い人たちに革命を忘れないようにと鼓舞するためのものなんだ。そして僕らはパンクミュージックを信じている。パンクミュージックは抑圧に対する反抗だ。クーデター後、ミャンマー軍は若者の生活と希望を破壊した。そのために若者の芸術や文化はクーデターから1年も経たないうちに途絶えてしまった。だからこそ僕らは15周年記念ライブを企画して、パンクミュージックと若者を結びつけて、彼らが信じるものを継続するよう鼓舞したんだ。でも僕らのショーがビアバーや軍のナイトクラブで演奏されることは決してない。僕らはまだ逮捕されていない。これまで幸運だった。まだ何も起こっていない。これからも何も起こらないことを今でも願っている。今も気をつけているんだ」
A Yoe Lay「戒厳令下ということで、多少の危険はあるかもしれませんが、一人のパンクスとしては気にせずにやるべきことをやります…」
Wai Yan「危険かもしれないけどそれを理解して、みんなで相談しながらやってます。思うんだけど、軍はアンダーグラウンドのバンドにはあまり関心がないのかも知れません」
Ye Yint「もちろん逮捕されるかもしれないし、殺されるかも知れない。危険だとわかっているけどメンバーと相談して、気にしない事にしました。メンバー4人全員で決断して演奏しています」


-ヨーロッパとか 東南アジアをツアーで回る予定があるというのは本当?
KK「まだ100%確実ではないけどトライしている

最中なんだ。ヨーロッパよりも、ビザが必要ない東南アジアツアーが先になるかも。ヨーロッパツアーに関してはお金を出してくれるプロモーターとまだ話し合っているところなんだ」


-The Rebel Riotは今、ニューアルバムを制作中なんだよね?進行具合はどんな感じ?何曲くらい入るの?
KK「現時点では9曲、もう録音し終えたよ!最終的に10から12曲のアルバムにしようと思ってるんだ」


-新しいアルバムでもまた女性ボーカルをフィーチャーするのかな?
KK「ああ、もちろん!」


-毎週末のFood Not Bombsの活動は今も続けてますか?

KK「うん、路上で暮らす400-500人のために今でも毎週土曜日の夕方には 食事を作ってるよ。でもそんなに注目されたくないからSNSにはそれほど多くの活動は載せていないんだ」

The Rebel Riot「 One Day」 CD
WOMEN AT THE FRONT CD

THE REBEL RIOTのCD/レコード/ドネーショングッズの通販取り扱いサイト:
https://bronzefist.theshop.jp

Share this article

Recent blog posts

Related articles