TO FUTURE 2023サブタイトル「NEVER AGAIN」について – 大小田伸二 a.k.a. GUY (TO FUTURE PRODUCTION)


今年もコラージュ・アーティスト「河村康輔」氏にto future のアートワークをお願いしました。
例年はその年に発信するテーマだけを伝え、彼自身に全てをお任せしていたのですが、今回はこちらからハードコア・パンクバンド「DISCHARGE」の名盤として知られる「NEVER AGAIN」のデザインをコラージュ・モチーフの一つとしてお願いしました。
このデザインは1920 年代から活動を始めたアーティスト「John Heartfield」(ジョン・ハートフィールド 1891 年6 月19 日 – 1968 年4 月26 日)の作品(1930 年代)で、きっかけは今年広島で企画開催した「PUNK 展」にあります。
ダダ宣言の冊子、そしてベルリンのダダイストJohn Heartfield の作品から現在のアジアのPUNK シーンに至るまで、約100 年の歴史を大量の資料と映像を駆使し広島市中区基町のオルタナティヴスペース「CORE」にて表現したものです。

主宰の川上幸之介氏によると、パンクに影響を与えた一つが前衛芸術グループ『ダダ』だといいます。
そこからも影響を受けたフランスの「Situationist International」を通して英国に飛び火した「KING MOB」。その一員だったマルコム・マクラーレンによりPUNK ROCK バンド「SEX PISTOLS」(1975-1978) として開花し、PUNK サウンドと共に反権威主義とモンタージュ、コラージュアート、ファッションを世界中に広めていきました。
その後「CRASS」(1977-1984)によりアート、サウンドと共にPUNK の持つ精神性は「反戦」「反核」「動物愛護」「フェミニズム」等、大きな広がりを見せることになりました。同時に彼らの提唱したDIY(Do It Yourdelf) の倫理的アプローチは自主制作レコード等々の発信に繋がりました。
同時期(1977- 現在も活動中)に出現した「DISCHARGE」はジャケットや歌詞で「反戦」を強烈に発信し始め、上述したohn Heartfieldの作品が転用された1981 年シングル「NEVER AGAIN」がリリースされたのです。
鳩にナイフが突き刺されたフォトモンタージュでアンチ「ファシスト」アンチ「ナチズム」を表現したそのジャケットデザインは、サウンドと共に当時大きな反響を呼びました。

私は1984 年、CRASS が解散した年に地元広島で結成されたハードコア・パンクバンド「愚鈍」に加入しました。それからハードコア・パンクを表現し続け来年で40 年を迎えますが、今まで続けてきたバンド活動と2005 年から始めたこの「TO FUTURE」という活動が、1930 年に「John Heartfield」が発表した作品、そして1910 年代に世界中に発信されたダダ宣言と繋がるなんて考えもしませんでした。

核兵器が未だ数多く存在し、各地で戦争が行われている混迷の今世紀、音楽が政治を語ることがタブーのように言われるのを目にするようになり、いつの間にか世の中の音楽は恋愛と応援歌で埋め尽くされるようになりました。しかしPUNK は100 年前と変わらず間違っていることに対して「NO !」を音楽で発信、表現し続けています。その大事なことを教えてくれた「DISCHARGE」と「John Heartfield」。

「John Heartfield」ともう1つ、河村氏に依頼したのが石碑に彫られた三人の少女です。
当時建物疎開作業を含む動員先で亡くなられた676 名の女生徒と職員の方の慰霊のために1948(昭和23)年8 月6 日に建立され、現在も広島市中区を流れる元安川沿いにある「広島市立高等女学校原爆慰霊碑(現市立舟入高校)」。
連合軍の占領下「原爆」という文字が使用できなかった当時の事情により、「E=MC2」という原爆を表す公式が慰霊碑に刻まれています。未来ある女子高校生の多くの命を奪った「原爆」。その原爆を文字として使用できず公式「E=MC2」を文字として彫り残した人々の想いが伝わる慰霊碑に「NEVER AGAIN」を強く感じ、河村氏にお願いしたのです。

「ナチズム」と「原爆」
このふたつの「NEVER AGAIN(二度とあってはならない)」をテーマに、河村康輔氏自身が「反戦平和」に込めた想いを合わせて表現したのが今回の作品であり、サブタイトルに込めた想いでもあります。
今回、TO FUTURE GIG に出演する地元広島のハードコアパンクバンド「NEVER AGAIN」も同じ想いをバンド名に付け、そして反戦を歌い続けています。そんな彼らに出演をあらためてお願いしました。
世の中には原爆、戦争だけでなく沢山の「NEVER AGAIN」があることにもこれからは目を向けていこうと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。
私自身、この活動で多くの「気づき」があったように、今冊子が皆様の「気づき」になれば幸いです。


ToFuture2023に協賛いただいたみなさま。

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